聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~奇跡の詩~
それから実に三週間近く、陽雨神は星の殻に閉じこもり、姿を現さなかった。

リュティアはひたすらに祈り、声を掛け、陽雨神を待った。彼が自分で自分なりの答えを見つけ出すのを待った。

「我とて、信じたい…」

それが三週間ぶりに顔を出した陽雨神の第一声だった。

「母上の言葉を、信じたい。だがサーレマーは約束を破った。それが真実だ。信じられぬ。何も信じられぬのだ…」

「約束……」

リュティアは目を閉じ、人生の約束を振り返る。そして静かに瞼をあげる。

「たとえその約束が果たされなくとも、約束とは力を持ちます。それが心にあるだけで、強くなれる。私はそれを、アクスから教わったのです…。陽雨神様、本当にそのことだけが、サーレマーさんの真実だとお思いですか? 真実とは…なんでしょうか。確かな真実だと思ったことが嘘になることもあります…嘘が真実になることも…」

リュティアはそれをライトから教わった。

「けれどそこに確かにひとつだけ輝き在るもの、それが真実なんだと思います。それをみつけたいなら、私たちは強くあらねばならないのではないでしょうか」

「サーレマーの、真実…?」

「きっとあなたは真実をみつけられることでしょう。それまで私は、おそばにいます」

「母上………」

陽雨神ははじめて涙を拭い、強く想う。

―サーレマーの真実を、探したい。真実は、どこにあるのだろう?

餅を差し出して朗らかに笑ったサーレマー。

不思議そうに星を叩いてはしゃいだサーレマー。

肩を寄せてうずくまり、一緒に泣いたサーレマー。

心に届いたその祈りの光。生きる喜びを思い出させてくれた人…。

いつしか大切なものとなっていた、その約束。

陽雨神の中に今、静かに勇気が生まれる。

真実と向き合う勇気が生まれる。

その時………!!
< 65 / 172 >

この作品をシェア

pagetop