聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~奇跡の詩~

黒いアクスの猛々しい斧の一撃で相手の胸がぱっくりと断ち割られ、決着がついた。

「勝者、黒いアクス!!」

オオオオォォォ――!!

男たちの野太い歓声が広場を埋め尽くす。

中央広場。

どの部族にも属さずピティランドの所有となる、国の中心に据えられた巨大広場である。雨などものともせずに例年通り今年もここで武術大会が開かれいよいよ最高潮を迎えようとしていた。

ついに今年の優勝者が決まったのだ。

たった今まで戦場となっていた円形の土を盛り上げ縄で囲んだステージに、男たちが我先にと押しかけた。

優勝者黒いアクスを讃えるためではない。勝者の血を浴びることができればもっと強くなれるといわれているからだった。

彼らは血を求めてステージのぎりぎりまで押し寄せる。何人もの男たちがステージに上ろうとして管理委員会の者に止められている。斧を振り回し、もっと黒いアクスに血を流させようとする者までいる。男たちは血に酔っているのである。

「おめでとう黒いアクス!!」

「おめでとう!!」

男たちがステージ下から黒いアクスに次々と酒を浴びせる。酒を浴びるのは優勝者だけに許された特権である。

しかし黒いアクスは険しい顔つきでそれを拒絶した。

「皆、待ってくれ。まだ、私が優勝ではない。戦っていない男がいる」

黒いアクスはステージ裏に運営補佐―戦う男たちに水などを差し入れる役―として女たちと共にいたアクスの腕をつかむと、無理やりステージの上に引っ張り上げた。

「なぜ出場しなかった! 正々堂々私と戦え赤いアクス!!」

見るからに強そうなアクスの出現に、男たちは皆興奮した。まだ戦いを楽しめる、血が見られると口笛を吹く者もいた。

皆の注目がアクス一点に集まった。

アクスにはこうなることはわかっていた。だからわざとステージ近くにいられる運営補佐を引き受けたのだ。

この時を待っていたのだ。

アクスは運営補佐として控えるハナや女たちと視線を交わし合うと、大きく息を吸った。
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