あたしこそが最愛最高の姫である






そして暫く歩くこと20分。





女の子をこんなに歩かせちゃダメでしょーなんて心ではブータれてるけど、和矢君の話に笑顔で相槌を打つ。





まぁ和矢君は頭が良いらしく、話もそこそこ面白いし、ちゃんと真のある会話が成立するからそこは評価してる。






生徒会は頭は良いけど話の内容は結構どうでも良いのが多い。






悠斗と紫苑に関してはゲームの話しかしてない。






直は話せばちゃんと会話が成立するけど、蓮なんて自分の脳味噌で勝手に人の言葉を変換してしまうから会話にすらなってない。








だから和矢君との時間は新鮮で、そんなに嫌いじゃなかった。







そしてすぐ目の前に見えてきた大きい映画館。






最近できたばっかりで凄い綺麗。






「じゃ、ここ行こうか?」





和矢君に微笑みながらうなずく。







すると彼は人ごみの中に、あたしを気遣って入って行った。





まぁそれでも彼が騎王の幹部だと女の子たちにすぐばれ。







あたしもなぜか有名で、見たこともない多分他校の子達に生徒会の姫だとバレてしまった。







……生徒会が超有名なのは知ってるけど、あたしまでここまで有名だなんて。






最近外でよく視線を浴びるはずだ。






そして、まさかの言葉がふと耳に入った。







「キャーーっ!騎王と生徒会のツーショットなんて神じゃん!これブログに乗っけようよ!」



「あ、ずるーいっ!あたしにもその写真送って!あたしもTwitterに乗せる!」










………あれ。







まさか、ネット通じてあたしの現在地バレちゃう感じ?







あらやだ。







敵はもう近くにいるかもっ!





早速訳の分からないテンションを発揮し、チケットを買っている和矢君に急ぐよう伝えたいけど、多分そうはいかないだろう。






「ごめん、おごってもらっちゃって…」






少し申し訳なさそうに可憐に微笑む。







するとまたポッと頬を染めた和矢君。







ごめん、今はその茶番に付き合ってる暇ない。







にこりとだけ微笑み、さっさと映画館内に入れるようとにかく急いだ。






そしてなんとか目的の映画の劇場へと入り、既に暗くなっている周りを見て一息つける。






ここにはたくさんの劇場があるから、そう簡単にはばれやしない。






しかも見る映画が見る映画。






反吐が出るほどあたしの大嫌いな恋愛系。





彼らはあたしを知り尽くしているから、自然にここは候補から外すはず。






もし劇場をしがみつぶしに探しても相当な時間がかかる。








それに今の時期は恋愛系の映画が3本も上映されていて。








ぶっ細工な女優が出ている映画をわざと和矢君に見たい、とねだれば速攻でそれに決まった。







そして奴らが乗り込んでくることもなく映画が始まる。






……たまに隣から向けられる視線には気づかないふり。







そんなにみられるとこんなにつまんない映画見るしかないじゃん。








寝ようと思ってたのに。







映画見なさいよ、映画。





隣りであたしをガン見してくる和矢君に心の中でほざく。







そして無事見終わった。








感想は、何だろこの映画。






何これ。何がしたいの。





べたな恋愛ストーリーで、なぜか最後は主人公のブサイクな女優がブサイクな顔をして死んでしまうという喜劇だったのに。







周りは結構涙ぐんでいた。








いやいや、明らかにおかしいから。







何故ここで死ぬ!?って何で突っ込めないの?






あー、あたしが歪んでいるだけか。







そして最後のエンドロールが終わり、電気がつき明るくなる。





ふと隣を見ると……。







絶句。






和矢君の目元が赤くなっていた。




……え、まさかこれで泣いたの?







常識人だと思っていた和矢君に結構な距離を感じてしまった。









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