【完】恋愛距離*.゜ーボクラノキョリー
そりゃ、自分が転勤族だってことも、だから苦労するってこともわかってたつもりだ。
それでも毎回、なんとか楽しくやってきた。
やっと……やっと、心を預けられる人を見つけたのに。
傷を癒してくれる人に、出会えたのに。
──なんて現実は無情なのか。
いつもはこんなすぐにまた転勤だなんてことなかったのに。短くても、一年は居られたのに。
転勤族じゃなくなることは、ずっと私が望んでいたこと。──けれど今の私には、必要のない事。
このまま転勤族でいいから、あともう少し、渓斗君と居たかった。
……どうして私の幸せは、こうもすぐ消えてしまうのだろう。
「恵梨?どうした?嬉しくないのか?」
「うれ、しいよ……」
嘘だよ。本当は嬉しくなんてないよ。
渓斗君のことが無くたって東京には──。
不意に思い出される、あの日の記憶。
傷付けられた心と、粉々になったチョコレートと、過去へと葬った筈の彼。
私はまた、あの苦しみの渦中に誘われるのだろうか──……