ビターな彼氏の甘い誘惑


微糖

***
言葉って大事。
***





「ほら、利理。
 これがいいんだろう?
 で?時期はいつがいい?春?夏?」



「は?」



私の、大好きな彼が
何でもないようにどさっと
書類の束を 机の上に乗せた。


えっと。

今日は、デートの約束で
食事して、
彼の家に帰ってきて
シャワーを借りて出てきたら

渡された・・・・



「し、資料?」


ウェディングドレスーー?


あ。これ かわいい。けどっ!


「あの、雅人・・・さん?」
「何?意外とセクシー系がすきなんだろ?」
「・・・これ、綾菜さんがやっていた 仕事の・・・」
「あぁ。俺が利理に着せたいと思ったから
 営業かけたんだよな。」

!!ま、まさかの職権乱用っ!!

「だから、どれがいい?」
「って、雅人さんっ。
 結婚式・・・って本気ですか!?」
「なんだよ。利理は
 俺のこと、遊びなのか?」


ちょっと拗ねたように、まっすぐ見られる。

というか、だって、
そんな。


「あの、プロポーズとか、その、されてないし。」

思わず口ごもる。


そもそも、
雅人さんったら、すごい褒めてきたり、
口説くけど「すきだよ」とか「あいしてる」とか全然 言葉にしてくれない。

そりゃ、態度見たらわかるでしょって言われたら
そうなんだけど。


解ってるけど。『結婚しよう』って言葉ぐらいほしい。


「ふむ。
 そうだったっけ?」

えーヒドイ。
もう、結婚するの前提だしっ。
まぁ、拒否はしませんが・・・

「っ。もうっ。雅・・・」

「利理。愛してる。
 お前しかいらないし、ともに歩いていきたいから、
 結婚してくれる?」


ーーーっ!!!!


「はぃ。」


そ、そーゆーことをさらっと、言えちゃうのが
ほんと雅人さんの素敵なところだなぁ。


「はぁ。利理のことになると
 つい手放したくなくて 先走っちゃうな。
 ごめんな。」
「っ。そ、んな。
 あの。私も、雅人さんが好きだから・・・」

ちょっと 申し訳なさそうに
雅人さんがおでこに ちゅ、とキスを落とす。

「利理。いいね。
 もう 一回、言って?」
「えっ。す、好きです・・?」


にっこり と雅人さんが私にしか見せない笑顔で笑って
ぎゅっと私を引き寄せて抱きしめた。


「利理。好きだよ。」

耳元でつぶやかれて
心臓が 痛いくらいときめいたのは
内緒にしておこうっと。


***


「あぁ、そういえば 和馬君の結婚祝い
 これがいいって言われたから、連名で送っといたけど、いいか?」
「ありがとうございますぅ?って、え?
 実家に・・・ですか?」

「いいや、新居に。」
「なんで雅人さんが 和馬兄ぃの新居とかわかるんですか?」
「本人に聞いた。」
「・・・・え?いつの間に・・・私、紹介とかしてませんよね?!!」

「ふ。営業部の部長の 本気外交、なめんなよ。」


にやり、笑う 雅人さんに
ときめきとは違う 何かを 感じて胸が高鳴ったのは
内緒にしておこうっと。


ちなみに、名刺交換もして、勝手にもう一人の兄にもご挨拶済みです。
仕事が早い 外堀を埋める 雅人さんです。

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