花と闇
涙が出そうなのを堪えて、笑った。
「そうだよな。御前、何度も転生してきたものな。そりゃあ、嫌気もさす。」
乾いた笑い声は静かに響く。

——深い奈落の底。
ヴォルフラムは蹲っていた。
誰の声もしない空間。
地面は冷たい。
「貴様は、戻りたいのか?」
同じ問い。
ひたひたと近づく骸の群れ。
立ち上がり、拳を握る。
「……あぁ。そうだ。」
(最初の“俺”ならば、失わずに済んだ。)
タナトスから奪われる愛した人を想う。
「私は、永劫に許さない。」
嘗ての罪が鎖となって、足に絡む。
「終わりにしてくれ。」
願うように呟いた。
花弁が落ちてきて、見上げる。
暗闇には明るすぎる程の色。
様々な色の花が咲く。
「もう、いいよ。」
振り向けば、白い髪の聖女が居た。
「いいえ、許さない。」
その声を向けばタナトスが居る。

目を覚ますと、クラウジアが居た。
口元は笑っている。
「——、アァ、ア、」
言葉が話せない。
“どうした?”
と問いたかったが、出るのは獣のような唸り声だ。
(あぁ、まだ、取り乱しているのか。)
心が落ち着いていないのだと思ったヴォルフラムは落ち着こうと深呼吸をする。
「、あ……くら、ら。」
「フラン!」
クラウジアはヴォルフラムを抱きしめる。
「良かった。」
安堵して、喜んだ。
「ウー……」
威嚇ではない唸り声がする。
「話をするのは、時間がかかりそうだな。どこか、痛くないか?」
ヴォルフラムは黙って首を振る。
「ウゥーッ」
話は諦めて、唸る。
「お腹減ったのか?」
その言葉に頷いた。
「何が食べたい?果物なら、あるぞ。」
誰かが見舞いに来たのか、机には果物がある。
ヴォルフラムは頷く。

それから、二週間して、退院した。
その後に取り調べを受けた。
内容は、シエリアが発言したことに対する事実証明と記憶していないことの補完する情報の提供だった。
対した時間もかからずに終わる。

シエリアが帰ってきたのはそれから一週間後だった。
男が主犯だということで、シエリアは被害者とされたという。

クラウジアとヴォルフラムが家に訪れると、シエリアの兄が出てきた。
「……出稼ぎから帰ったのか?」
「色々と軍と手続きがあったものでな。」
兄は言う。
「クラリス兄さん、ごめんねー!」
シエリアはリボンを結びながら慌てて出てくる。
「シエン!」
クラウジアは再会に喜ぶ。
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