花と闇
シエリアは何か言いそうになったが、言葉を飲み込んだ。
少し、惑いがあったのをヴォルフラムは解っていたが、少し唸って無視をした。
「もう、怪我は大丈夫?ごめんね。」
「大丈夫だ。」
申し訳なさそうなシエリアにクラウジアは言う。
後ろにいるヴォルフラムも頷いた。
「散らかってるけど、どうぞー!」
そう言うと、シエリアは中へ案内した。
相変わらずの人が住んでないような雰囲気にクラウジアは“どこが散らかってるのか”と思う。
「シエン。」
クラウジアはシエリアを抱きしめる。
シエリアはびくっと驚いた後、やんわりと離れた。
「ご、ごめん。びっくりしちゃった。」
慌てて言ったものの、目は合わせない。
「えーーっと……ほら、あの、えーっと。」
言い訳を考えて、諦めた様子で申し訳なさそうにした。
「ごめん。」
「気にしてない。突然抱きついたのが悪い。」
クラウジアは微笑んだ。
「おいで。」
今度は驚かさないようにして腕を伸ばす。
「……」
シエリアは困った表情になった。
「ありがとう。」
そう言って、手を握って押し戻す。
「そうか。シエンが嫌なら仕方ない。」
クラウジアは諦める。
「クララ……」
ずきっと心が痛んだ。
(ほんとうはね……ほんとうは、あまえたいよ。)
心の中で思う。
脳裏に惨劇が映る。
殺した人の腕が地面から首を絞めに来る光景が浮かんだ。
それは、ただの幻想だと知っていた。
わかってる。
それは、ただ、懺悔の心がそうさせると。
後ろから足音がして、指が“殺せ”と指図する。
息が詰まる。
甘える資格は、人殺しの自分にはない。
シエリアは静かに後退る。
こわい。
こわい。
足音が近付く。
あの男の足音。
(……いまはもういないの。)
そう言い聞かせるも、足音は止まない。
後ろをばっと振り向くと、クラリスが居るだけだった。
「どうした。」
クラリスは静かに頭を撫でる。
「…………あ、あ」
“足音がした”と言いかけて口を閉ざした。
「ううん。大丈夫。」
崩れ落ちそうな自分を保つ為に見栄を張る。

少しして、話を始める。
クラリスは黙って両頬にお菓子を詰め込んで話を聞いている。
「——で、フランの奴、点滴振り回して暴れるのだ。」
“困った奴だろう?”と、病院のことを話す。
「ガルルルッ」
ヴォルフラムは威嚇した。
“これ以上は言うな”ということらしい。
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