君の全てが欲しいんだ
「いや、…知らない、けど…。」
中西さんは、いわゆる有紗の親友。
付き合ってる頃は、よく一緒にカラオケとか行ったんだけどな。
別れてからは、全然。
…そういや、久し振りに喋ったような気がする。
「有紗とね、連絡が取れないのよ。」
長い睫毛が、バサバサと揺れる。
「え、いつから…?」
「私はね、もう3週間くらいになる。
一緒に買い物に行って、別れたのが5月の終わりだもん。」
「学校、来てないの?」
「最初はね、単に休んでるだけかなって、思ってたんだけど…。
美雪ちゃんとかさつきちゃんとかも、知らないっていうし…。」
っていうか、誰だよ、それ。
美雪ちゃんも、さつきちゃんも、僕は知らない。
僕は有紗のことを、何も知らないんだ。