君の全てが欲しいんだ
「実家に、帰ってるとかじゃないの?」
「それなら、連絡、あるはずだもん。
私、もう何回もメールしてるし。」
「…いや、僕は何にも…。別れてからは全く…。」
戸惑いを隠せないままオロオロとする僕に、彼女は含んだ笑いを見せた。
「だよねーっ。
未来くんと有紗、別れてるもんね。連絡、あるはずないか。」
困ったように、眉を下げて。
中西さんは僕を見上げ、身体を捩った。
「旅行とかじゃないの?」
「うーん、そんな話、聞いてないんだよね。
ま、いいや。知らないならそれで。」
一気に興味を失くしたんだろう。
中西さんは女の子たちのグループへと戻っていった。
別れた男が、知ってるはず、ない。
そんな上からの視線が気になったけれど。
まあ、しょうがない。
僕は女の子たちの間では草食系に分類されているようだし。
実際、――――。
別れてから…。
有紗からの連絡が、一切なかったりするのは事実、だったりする。