シーソーゲーム
「…だが欠点があった。その制度は誰が神なのか分からないこと。そして、自分が神だと知ったら権力と能力を使って暴れまわること。だけど、今の神は知っている。自分が何をすればいいのかも知っている。それは…」

 澁は突然口をつむぎ、表情一つ変えずに黙りこくった。俺の目を一途に強い眼差しで見つめ続けた。

 にらめっこをしているわけじゃないんだから、と俺は目をそらし、再び口にお茶を注いだ。そして顔を上げると、まだ澁は俺の目を見ていた。まるでもう用がないから帰れとでも言っているようだった。呼んだくせになんだと創造で空想会話を勝手に進めた。

「じゃ…そろそろ、おいとまするか」

 俺は立ち上がり、置いてあるスクールバックを持ち上げた。

「言いたいことは言っただろ。これで終わりなんだろ?」

 澁は何も言わず、俺の目だけを見ていた。

 さすがにたじろいだな。まだ見ているとは。

 俺は玄関まで歩き、澁がついてくるのを背後に感じていた。そして靴を履き、ドアノブに手をかけた時だった。

「…いつか、来る…」

 つい、え、と声を出してしまった。澁はまだ俺を見続けていた。

「…リョウも、いつか、向かい合わねばならない…事実に」

 その時は何を言っているのやらと、もう今日澁が話したことを大部分一時的に忘れていた。

 まさかこんなに多くのことを話されるとは思わなかった。小海や日野の話から今話したことまで、すべてを覚えることはできない。感覚的でなら覚えている。それに、すべてを丸呑みに信じるとなれば、覚悟と自分を捨てることが必要だった。今の俺には双方ともできない。

 しかし、このことが後に信じることになるとは今の俺では想像もできなかった。
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