シーソーゲーム
「まあな…昨日、夜更かししてな…」

 氷野が近づいて来ていることに気付かずに、俺は二人の顔を見ずに、その二人の間を見ていた。そして氷野に肩を抱かれ、小さい声で言われた。

「昨日のことだろ…あいつにはよく言っておいたから、もう心配すんな。昨日のようなあいつはもうよっぽどの限りださないって…あとさ、どうするよ。昨日の続き…」

 背筋に冷たい筋が走った。凍ったようだった。

 小海だけでなくお前もなのだが、氷野はなぜか笑みを浮かべている。不気味だ。

「いや、遠慮しとく…ほら、疲れてるしさ」

「そうか」

 氷野は俺の肩から腕を下ろし、小海と再び話し始めた。

 鼓動が速くなり、緊張がなかなか解けない自分がいた。なんて末恐ろしいやつだ。

「おい、どうした。寒気でもしたか。顔色悪いぞ」

 ミズキは全体に指示を入れてから戻ってきた。

「保健室に行ったほうが…」

「いや、大丈夫だ。眠くてたまんないな…」

 俺たちがやるはずのグランドでの第一試合はすぐに終わった。接戦の接戦で、一回に一点をとってそのまま逃げ切った、あまりにシンプルなゲームだった。

 そして俺たちの試合。挨拶を交わし、始まった。

「そういえばお前らだけだな。男女混合チームは」

「でも勝ったからここにいるんだろ。そんなこともあるってこった。どんな試合もやってみなきゃ分からないってな」

「そうだな。こういう制度を採り上げてすぐに決勝リーグだもんな。決勝リーグに進んだって聞いた時、正直言って驚いたよ」

 嵯峨野と試合前に少々だべっていると、いつの間にか先攻後攻は決まっていた。俺たちが先攻だった。

 初回、俺たちはあっという間に二点を献上した。一番二番と二者連続フォアボール。そしてアズサの二塁打。しかし後者はあっという間に三者凡退。

 守りの初回、先発はアズサだった。体をぎこちなくではなく、昨日のようにしなやかに動かしている。鉄人とでも豪語されそうな勢いで投げていた。どうやら体調は健康そのもののようだった。昨日のように完全試合を続けそうだ。なんて言ったって、この回も三者凡退だった。
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