シーソーゲーム
 今しかできないか。俺も何を言っているのだか。アズサの言うとおり、確かにこの球技大会でピッチャーをできるのは今しかない。まして男子を相手することなんてこの将来ないことだろう。それにもしかしたら来年にもなれば、男女混合チームがなくなるかもしれない。これが最後かもしれない。だがプライドを捨てる場面なのかと考えると、絶対違う。アズサが何と言おうと思おうと嫌われようと、俺は絶対にこの信念を曲げない気だ。

 そんな不信で気まずい雰囲気で俺たちは各ポジションに散った。アズサはピッチャーマウンドに向かった。

 俺はアズサを眺めていた。どうせ球なんて飛んでこないだろうと思い、アズサの横顔を見ていた。何かを振り切ろうという思いで思い切り腕を振っていた。

 この回も三者凡退で、俺たちはそそくさとベンチに戻った。

 互いが肩身狭い思いをしてベンチに座ることになるはずだったが、この回俺の打順が回ってくることに気がついたので、ベンチから早く脱退した。

 その空気と雰囲気が嫌だった。アズサは変わらず一人集団からはぐれたように離れて座っている。それはなんとも孤独で、惨めな姿だった。今まで例がない、アズサの姿。いつも明るく振舞って周りをその空気に引き込む魅力の持ち主なのだが、俺の言ったことはそんなにへこませる内容だったであろうか。少なくとも俺にはそれはないと思う。しかし実際にこうやってへこんでいるのは希どころではなくない。元気がないというのはあっても、このへこみようは一体何か。

 そうこう考えていると、あっという間に先頭の岸は三振した。そして小海も凡退。俺の打順が回ってきていた。

 審判の先生も不服そうに待っている。怒らせてしまったか。
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