シーソーゲーム
 三者凡退が当たり前のように思えてきた。こんな変化のなく展開が乏しい試合は生まれて初めてだ。

 俺はまた守備につこうとした。今度こそ座って寝てやろう。そんなくだらない決意を攻撃の時に考えていた。

「ねえ。ちょっと」

 アズサは守備につこうとする俺の服を引っ張った。

「何かようか?」

「話がある」

 どうやらまともな話らしい。時間を割いてまでも重要な話だろうか。

「それで、何だ」

「あんたがピッチャーやりなさい。私がそのままショートに入るから。肩がこっちゃって…何よ、その目」

 正直じゃないところがまたアズサらしい。なんとも膨れ面な顔をして、いかにも肩が痛いかのように振舞った。

「ああ…分かった」

 しかし度胸だけでマウンドに上がったが、よく考えてみると、ピッチャーなんてやったことがない。どうすればいいのか。とりあえず投げればいいのか。

 交代のことを審判に告げねばと思った時、澁は審判に交代を告げていた。なんとも要領のいいやつだ。まるで俺たちの会話をすべて盗み聞きしていたような、素早い行動であった。

 澁は座り、審判は三球投げろと言った。

 俺は投げてみた。すると、以外にも以外、放ろうと思ったところにボールはまっすぐと行くのである。しかしアズサよりかは遅い球だ。それがなんとも恥ずかしく感じられた。

 バッターが立ち、このままの調子で行こうと思った。そしてボールが手を離れた。だがボールはさっきとは思うように行かず、外角を外れた。多分、バッターに当てることが恐いのだろう。実際当てたらというその先の想像が恐い。こういう時は逆に当てようという気持ちで行けばいいというが、本当だろうか。

 物は試し、俺は澁のミットにめがけて、当てても構わないという気持ちで投げた。

 金属の快音が聞こえた。ボールは俺を越え、センターに向かった。そしてセンターの頭上を越える当たりとなった。だが、小海は追ってついにグローブにボールを収めるところまできた。体は半身で、なおかつ足はもつれていた。ボールは虚しくもグローブには収まらず、地面に落ちた。

「ドンマイ、ドンマイ」
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