シーソーゲーム
 すかさずミズキが突っ込む。

「何で笑ってんだ?」

「いや、なんでもない」

「そんなに秘密なのか」

「いや、別に」

「別にいいけどよ、今日は早く帰ろうぜ。何か不気味だ」

「そうだな。そうしたほうが良さそうだな」

 俺たちは自転車のペダルをいつも以上に早くこいだ。

 学校化から家までの帰路、いろんなことを知った。閉会式が終わってから、何か変だ。風も吹かない。自転車も通る気配はない。信号も変わらない。車、人が見当たらない。猫もいない。野良犬もいない。音もない。川は流れていないように見えた。波紋がないように見えた。雲も流れていなく見えた。分解していなく見えた。先ほどまで空は赤く染められていたが、いつの間にか闇は近づいていた。それに肌寒い。

「ちょっと急ごうぜ」

 俺たちはついに立ちこぎまでして、家へ帰ることになった。

 そしてY字路でミズキと別れた。一人になってもまだこの環境は変わらない。

 住宅街を通り、いつもより早く公園の横を通った。その時初めての体験が一つあった。風が俺の顔に体に皮膚に当たらない。風を切って走っているはずだ。ならば空気か風を感じるはずだ。これが無重力かと、体験したこともないことを想像した。

 それよりも、空気は動いていないはず。ならばなぜ空気を切っている俺が何も感じないのか。そんなことを考えるのも束の間。もう家の前に着いていた。

 家に入り、居間には母さんがいることを確認した。キッチンで晩飯の準備をしているようだ。

 階段を上がり、自分の部屋に入る。いつものようにベッドに大の字になって寝た。今日の不可解な現象について考えた。

 あれは閉会式が終わってから。アズサと話し、ミズキに助けられ、そして着替えに教室に戻った。そうしたら起こった。その時からだ。クラスの男子が忽然といなくなり、帰りも何も感じない。その間に何かが起きていたのか。まさか小海や氷野、澁の仕業ではなかろうか。しかし携帯の番号やメルアドも知らない俺には確認することさえも出来ない。

 どうしようかと考えていると、待ってもないことが起きた。携帯が鳴り出した。

「はい、もしもし」
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