シーソーゲーム
「…私。ちょっと時間ある?」

「ああ、ちょうど今、暇だったところだった。それで、何の用だ?」

「いや…用ってことじゃないんだけど…それよりどうしたの?何か変だよ?」

 少し興奮していた。それが声を通してだけで分かったのか。さすが幼馴染と大きな花丸をあげたい。

 ここでやはり迷った。話すべきか。それとも話さないか。こんなことを話して、何になるか。しかしアズサはすでに俺が何かを言いたいということが分かっている。ということは今話さなくても、後に強気に攻められて吐かされるに違いない。それならばこう離れているうちに話してみるのも手だろう。

「いや、特に…いや、あった」

「どっちなのよ」

「お前さ、帰ってくる途中、何かおかしくなかった?」

「え?何にも無かったけど」

 普通の応答だった。

「いや、さ。何て言うか…何もなかったて言うか…止まってたって言うか…」

「一体何なのよ」

「いや…いつもと異様だったんだよ。何て言うのかな…俺が…俺たちが…別の世界にいたみたいでさ」

「ふーん…」

「それで、用件は?」

「え…忘れちゃったわよ、バカ。あんたが悪いんだからね」

「何だよ。お前が聞くからじゃねえか」

「それよりも、明後日ね。忘れるなよ」

「あ…ああ」

 携帯を切り、アズサは何を話したかったのかを考えた。しかし幼馴染といっても、もう昔とは違う。それに昔は微塵たりとも考えなかったが、アズサは一応、女だ。もちろん彼女と一般社会で呼ばれる対象の考えなんて俺たち男には分からない。いくら考えたところで、俺には分からない。

 それに乗じるように今日起こったことはどうでもいいような、そんな心境に至っていた。いつの間にか外も回っているようで、またいつもが訪れていた。 

 携帯は手に持ったまま、天井を眺めながらため息をついた。これは今日一日の疲れとストレスだ。ただこうしているだけで気が休まる。ボーっと何もしていない時は疲れるのだが、この違いは何だろうか。

 また自分の哲学にはまるところ、手中から震えた。
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