シーソーゲーム
 しばらく岸を見れないでいた。また目が合うと、次はどんな反応を見せればいいのか。俺には分からない。分からないこと尽くしだ。

 しかし最後にかかる頃には飽きてしまった。これを観て岸はどうなのか気になった。果たして楽しんでいるのか。

 最後に一度と岸の横顔をうかがおうとした。するとどうだ。岸は泣いているではないか。なぜ泣いているのか。俺には理解できない。頭をひねりながらスクリーンに映っている映画を確認すると、やはりそこまでの映画ではない。この映画を観て、何回あくびをしたことか。

 あまりに必死に見ている岸を見ると、俺は最後だけでも必死に観ざるを得なかった。

 そしてそれは的中する。映画が終わった後、岸に尋ねられる。

「私…初めて映画で泣いちゃった…リョウ君、どうだった」

「え…そりゃ、あれだろ。やっぱり、感動した」

「どんなところが?」

「あ、そうだな…やっぱりラストだな」

「ふーん…」

 そっけない返事で岸は行こうと言う。やはりこの返事はまずかっただろうか。明らかに岸の期待に応えられていない。岸の機嫌が悪くなったようにうかがえた。

 近くの喫茶店に入り、互いに無言のまま席に座る。店員が注文をとり、その時に何を頼むと話しただけだった。その後、俺たちは何も話していない。

 そういえば、お腹がすいた。朝から何も食べていない。後でまた何か注文しようか。

 続かない話のおかげで空気は不穏になった。この間に何か解決法はないかと、この後の話題を考えてみる。映画の話題は、もうだめだろう。これからの予定はどうだろうか。そうだ。それにしよう。

「岸さん。これからどうする?」

「…どうしよっか」

 電車の中とは打って変わって、態度はあまりに冷たく、いつもの岸は見られなかった。やはり俺のせいなのか。さっきまでの岸はもうどこかに行ってしまっていた。

「瀬上君…決めてよ」

 瀬上君。それは未だに岸の口から聞いたことがない言葉だった。聞いていなかったのかもしれないが、確かに聞いた事はなかったと思われる。

 するとなぜか切なく、心が怯えたように震えるのであった。急に友人という関係から崖の下に落とされる、いや、踏み外す、もしくは崩れる。同時にボクサーに殴られて脳が揺れるようだった。
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