シーソーゲーム
 家に入って無言のまま部屋まで行き、自分の部屋を端から端まで見渡す。何も無い部屋。とくに散らかってもいなく、退屈な部屋。いつも勉強する机があり、いつも座る椅子があり、いつも寝るベッドがある。それはいつも同じことで、いつもと変わらない閑散した殺風景な景色だった。

 いつだったか。何か面白いことをと、刺激を求めたこともあった。いつもと違う生活をしてみたいと思った時期があった。だがこれはその刺激であり、面白いことなのだろうか。もしアズサと付き合うならば、それは確かに生活が変わることだろう。しかも一変と、だ。だがそれは変わるというものではない。移る、だ。まるで違う世界に行ったかのよう。もう二度とこの生活ができない世界に移ってしまうようで、恐い。

 俺は恐れていた。アズサの言葉ではなく、その先に。

 そういえば朝起きてからすぐにここを出た。布団は荒らされたままだった。それには目もくれずに椅子にどかっと座る。

 その後、何も考えなかった。考えることが無かった。考えても無駄だと思った。考えることが嫌だった。

 ただ刻々と時間が過ぎていく。それと平行に俺の生気が失われていくようで、体の重みがぐっと椅子にかかった。首が重くなってきた。

 今日一日、疲れた。夕飯なんて食べていない。お腹もすいたし、意識が遠のいていく。

 その時、ベッドに移動をしようと考えた。しかし疲労が抵抗する。動けないまま、ただ地球に逆らえなかった。

 眠った後には、お腹がすいたと一階へ降りる。もう親は寝てしまったようで、リビングは真っ暗だった。俺は何か食べれるものと飲むものはないかと冷蔵庫の中を探した。時計を見ると深夜。外を歩くような人は当然いなく、誰のためか外灯は夜道を照らしている。遠くから自動車の走る音が聞こえる。こんな夜遅くにご苦労なことだ。

 空気は重く、冷たかった。誰も使わない空気が透き通って見えて、昼間のものとは明らか違うものだった。肌をさすられると独特の感触がする。なぜかこの空間にいると、心が落ち着く。
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