シーソーゲーム
 シャワーを浴びて体を拭く時、鏡に映る自分の姿を見た。いつもと同じ光景が目に映る。鏡に映る。だがいつも見えるものが見えない。自分の本当に見たいものが見えなかった。

 服を着て、またリビングに戻り、再び冷蔵庫を開けて体にためた熱を冷ます。テレビでも見ようかと思ったが、夢中にもなれそうになかった。

 結局部屋に至り、今度はベッドに寝る。さっきも寝たが、まだ寝れる。

 明日、どうしようか。

 やっと本題に戻ったが、考えても思いつくことは無かった。考えても無駄だ。ただ頭を悩まして眠るのと、ただ寝るのを待つのと変わらない。俺なら後者を選ぶ。

 電気を消すと、家はついに寝静まった。


「…ほら、もう起きなさい。いい加減にしなさい。遅刻するわよ」

 朝は訪れた。ほとんどの人は口をそろえて言う。清々しい朝だ、と。だがそれとは逆の人もいる。またやってきた、しんどい、起きたくない、疲れた、などと。だが俺の場合、いっそのこと楽に死にたい、だった。

 教室でアズサと顔を合わせて、何と言えばいいのか。ハロー。猪木風の元気ですか。それともご機嫌いかが。そんなバカな挨拶をする陽気な日本学生なんて数少ないというより、日本にいる限り、そんなことは希にしか無い。

「早く起きなさい。もう仕事行かなきゃ行けないんだから」

「いいよ。行って。俺は二限目からでるから」

 母さんはあきれ返って、もう知らないと言い残して部屋を出て行った。

 はあ。どうしようか。

 ああは言ったが行きたくないのが本音である。詳しく言えば、行きたくないのではなく会いたくないのだが。

 ベッドの中で玄関から出て行く母さんの音を聞くと、家で一人になった。

 何もすることも無く、ただ同じ回答を、繰り返し頭に思い浮かべることのできる質問を自らに行っていた。

 また寝ようか。布団の中から窓の外の景色を眺める。いつも見ている見飽きた景色。部屋の隅はうっすらと暗く、窓から差す光が舞っているほこりが見えた。

 布団にもぐりながら、これからどうしようかと考えた。もしこの家にとどまっても、何をするということもない。だがここから出て学校に行く道、きっとどこか店に入って時間でもつぶすだろうか。
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