I love you に代わる言葉
09話 憂愁の相~ユウシュウ ノ ソウ~
 朝目覚めて、やっぱり気分は晴れやかなものじゃなかった。尤も、清々しい気分で目覚めた事など、これまでの人生で一度だって無いけれど。
 上半身を起こし、窓に目をやる。
 カーテンの隙間から漏れる光と、透けた光で明るくなった室内を見て、今日も晴天なのだと知る。いっそ嵐でも来てくれればボクの心は晴れそうだ、なんて頭の隅で考えながら自嘲気味に笑い、ベッドから抜け出した。
 気分はやはり重い。今日がテストでなければサボる事が出来たのに。
 授業はよくサボるが、ボクはテストを受けなかった日は無い。テストで確実に良い成績を残しておけば、少々サボったって大目に見て貰えるからだ。
 二学年の生徒数は二百五十人弱。ボクの成績はその中で上位。確実に十位以内には居る。それはテスト成績表で確認出来る。ま、バカ校で上位でも何の自慢にもならないが。
 おねーさんやオバサンには万引きがバレていたが、学校にはバレていないし、ボクの外見は優等生とは言えぬまでも不良と呼ばれる部類の外見でもない。髪は元々色素が薄く、茶髪に見えなくもないから染める必要は無かった。明るい色に憧れもない。ピアスの穴もないし、制服だって僅かに着崩した程度のもの。要するに、そこそこ校則を守り、そこそこ破る。その程度のもんだ。
 だからセンセー達がボクに辟易させられるのはサボる事と態度のみ。それでこそ日生だ! と前向きに捉えるセンセーも若干名いるが、あからさまに嫌うセンセーは少なくない。だけど成績は優秀と言える部類に入るから簡単な注意で済むんだ。
 そう、だから結局ボクは良い成績さえ残していれば無問題なんだ。
 けどやはり、面倒だ。だけど今日は行かなければ。


 それに今日は……――今日こそ、此処を出たい。
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