I love you に代わる言葉
10話 友情の結~ユウジョウ ノ ケツ~
 笹山真と別れた後、ボクはすぐに今井が待つ下駄箱へ向かった。
 今井はそこでしゃがみ込みケータイゲームをしながらボクを待っていた。その様子を見て、まるで言い付けを守る犬だな、と考えたが、すぐに取り消す。こいつは犬のように利口じゃなかった。
 それからすぐに今井の家へと向かった。その距離は、場所こそ違うものの、ボクが住んでいた家までの距離と然程変わりなかった。
 今井が住んでいる家も、一軒家でなくアパートみたいだ。外観はまぁ、ボクの家と変わらない。ボクの家を見て驚いたのは、自分の家と変わらないと今井が感じたからか。
 ただ、絶対的な相違点が二つある、とボクは思った。それは、ボクの家よりも遥かに温かみがあるという事。そして、明るく活気があるという事。此処は住宅街、その為、周囲に家が建ち並んでいる。少し歩けば大きな道路やコンビニやスーパーに出られる。それらの点がそう思わせるのかも知れない。――ボクの場合、単なる感情から生まれたものだろうが。
 周囲の様子を窺う。騒音らしい騒音もないな。住み易い場所なんだろう。
「入れよ」そう言ってボクを中に招き入れる。客人より自分が真っ先に入る所がやっぱり今井だな、と心の中で苦笑した。
 玄関を入ってすぐ左手に、緩やかとは言えぬ古い階段がある。階段を上がって右手と左手に部屋が一つずつあり、左が母親の、右が今井の部屋らしい。玄関を真っ直ぐ行けばダイニングキッチン、風呂、トイレ等の水回りスペースに出る。
 物音一つしない所から察するに、どうやら今はボク達だけらしい。まだ昼過ぎだし母親は仕事で留守なんだろう。少しホッとする。
 キッチンがある部屋を覗く。ボクの家のリビングと違わずそこは綺麗に片付けられているのに、どうしてこうも、ボクの家とは違い過ぎるんだろう。生活感に溢れた家、人が住んでいる気配、それを感じられるのはいつぶりだろうか。『居ない』と『留守』ではこんなにも室内の様子が大きく異なるのか。室内の温度すら高く感じる。それは真夏の暑さの所為じゃないから不思議だ。
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