愛してもいいですか



「ドレスのほうはどうされますか?」

「前回と同じでいいわよ、面倒だし」

「『……と言ってもうかれこれ三度ほど同じドレスを使い回しているので、パーティの際は新しいものを買い直すように』、と神永さんからは伝言を承っておりますが」

「っ神永……」



私がまたその言葉を言うことを分かり切っていたように、神永は先手を打っていたらしい。

そう言われてみれば、確かにそうかもしれないけど……!

でも黒の無地のワンピースは着やすいし使いやすいし、変に目立たないからどうもそればかりになってしまう。今日仕事の後にわざわざ買いに行くのも面倒だし……。



「では、ドレスの方は自分が用意しましょうか」

「え?」

「若い女社長が毎度同じドレス、というのもあんまりですから」



ってことはつまり、日向が選んで買ってくる……ということ?

それはそれで、すごい色柄を選びそうでちょっと怖いけど。



「……本当に大丈夫なんでしょうね。気に入らなかったら着ないわよ」

「ええ、もちろん。架代さんにピッタリのドレスを選んで差し上げます」

「ならいいけど。じゃあこの店、私がよく行くところだからここで買って来て。店員に名前言えば細かいサイズまで分かるから」

「わかりました。ちなみにスリーサイズをお聞きしても……」

「いいわけないでしょ」



行きつけのショップの連絡先が書いてある名刺をピッと日向へ投げつけると、その小さな紙の角は見事に日向の額へ刺さる。



どうせ日向のことだから、胸元や背中の開いたセクシーなドレスを選んでくるだろう。

でも私はそういった露出は嫌い。気に入らなかったら本当に着てやらないんだから。



そう思いながらもほんの少しだけ、自分の為に選んでくれるドレスが嬉しいと思えた。





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