愛してもいいですか
「『宝井架代、二十七歳。宝井英三社長の一人娘にしてJ.I.デザイン株式会社代表取締役。公立新宿第一小学校、同じく公立の新宿第一中学校、都立黎明高等学校・建築家を卒業後は代々木建築デザイン短期大学へ。在学中から経営学を勉強する傍ら『宝田架代子』として身分を隠し当社のアルバイトとして働き、卒業後も三年間営業部の社員として勤務。二十三歳にして社長となりながらも、今でも会社の利益は年間黒字……」
「え!?な、なに!?」
突然ペラペラと話された内容に驚き首を傾げると、背後で神永がボソ、と呟く。
「昨日、私が彼に渡した書類に書いてあった社長の経歴です」
「昨日……ってことは一日でこれだけ覚えたの!?」
「はい、俺昔から記憶力はよくて。ちなみにここ五年間の当社の損益と契約数、昨年対比の数字まで覚えてますけど……聞きます?」
「い……いい、聞かない」
一日で経歴を覚えるどのろか、会社の細かな数字まで覚えているなんて……。にこ、と笑う日向にどうやら能力が高いことは本当なのだと知る。
「で、でも少し記憶力がいいからって秘書として使えるかは分からないじゃない」
「まぁ確かに、それもそうですね。あ、じゃあ社長が俺を秘書として使えないと思ったら即切ってください!」
「は……?」
「ただし、チャラいとか軽いとかそういう点じゃなくて、秘書としての能力で見て、ってことで」
秘書として使えないと判断したら、即交代。そんな条件を自ら提示してくるなんて、よほど自信があるのだろう。
……いいじゃない、そこまで言うならのってやるわよ。