愛してもいいですか



神永とそんな話をした日の、夕方十八時。仕事を終え社長室を出た私は、下へ降りようとエレベーターに乗り込む。



今日の夕飯はどうしようかな……またコンビニで買えばいいか。

学生の頃から経済学や建築・デザイン関係の勉強は沢山してきた。その一方で家事に関してはさっぱりで、あまりに料理が出来ない故にコンビニから徒歩5分の位置にあるマンションに住んでいるくらい。もちろん部屋は、汚い。



すると突然、エレベーターはポン、と音をたて三階で一度止まる。



「でさー、大竹の奴がまたミスしてさぁ」

「えー?あの人ミス多いですよねぇ……、あっ!」



三階から乗ってきたのは、スーツを来た若い男性社員と女性社員の二人。それまで楽しげに話していた二人は、私の顔を見た途端『げっ』と驚いた顔をして黙り込む。

……そんな明らかに黙り込まなくても。

様子から察するに、『こんなところで社長と行きあってしまった』ということなのだろう。気まずいのは分かるけれど、そんな態度をされればこちらは余計に気まずい。


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