愛してもいいですか
だ、ダメよ。こんな気まずさに負けちゃ。いい会社づくりには社員とのコミュニケーションが必須なんだから。
見た感じ年齢も近いだろうから、少し話せばすぐ打ち解けられるはず……。
「お、お疲れ様。今あがり?」
「えっ!?あっ、はっはい!!」
精一杯の勇気で気楽に話しかけたつもりが、二人はビクッと驚きしどろもどろになる。
「いつもお疲れ様。部署はどこ?」
「えっ、あっ、経理部でして……きょ、今日も残業してすみません!」
「え?別に、残業自体は悪いことじゃないでしょう?」
「そ、そうですか!?ありがとうございます!あっ俺フロアに忘れ物した!!」
「わ、私も!じゃっじゃあお疲れ様でした!」
そしてまだ乗ったばかりだというのに、バレバレの言い訳ですぐさまエレベーターを後にした。その場には、一人私だけが残される。