変愛
それから駆け足みたいに、急展開の話がふってきた。
もこみちが結婚したいと言い出したのだ。初めは冗談だと思った。
その日は彼ら二人と彼らと信頼関係のある後輩とカラオケをしていた。
中川家が未来の奥さんと紹介し、もこみちが否定せず笑っていた。
私もその場のノリに合わせていたが、
後輩は何か言いたげに私を見ていた。
なんだか気になる事があり、楽しめてない感じに見えた。
カラオケもお開き前になり、もこみちと中川家が支払いに出て行った時、
その後輩は私に歩みより、こう囁いた。

「本当に付き合ってるんですか?」

私は思わず絶句した。

「えっ!なんか変?!」
私は後輩の質問に、こう答えるしかなかった。
戸惑ったからだ。
そんな私の慌てふためく様に、

「いえ、それなら良いんです…!
頑張って下さいね。」

と後輩が言った。
私が

「どう言う意味!?」

と聞き返すと、後輩は口ごもる。
そしてつぶやくようにこう言った。

「いえ、今まで、
もこみちさんに彼女居なくて。
あんなイケメンだから…寄っては来るんだけど、作る気ないみたいだったし…
中川家さんも…
えっと、俺、何言ってるんだろう…
とにかく二人は
とても仲が良いんです…俺の女友達も二人に割り込むのは無理だから、もこみちさん諦めるって!」

後輩の言葉に私は驚いて聞き返した。

「どういう事!?」

その瞬間、ドアが開いた。
もこみちと中川家が戻って来たのだ。

慌てて後輩が私から離れた。

中川家が訝しげに、その様子を見ていた。

「もこみちお前、後輩遅れよ。俺、…ちゃんと上で呑んでるから」

中川家の言葉にもこみちと後輩が
戸惑っていたが、中川家の有無を言わせない態度に二人は頷いた。

私は杓子定規だから二十歳になるまでは呑まないと決めていた。
中川家はそれを知っていて、普段は私に勧める事はなかったのだ。
そんな中川家が私を飲みに誘う理由は1つしかなかった。
2人っきりで話をしたいのだ。
席に付いてから、
中川家は一言も言葉を発しなかった。
私は居心地が悪く落ち着かなかった。
私達の前に、注文したものが運ばれた。
女性向きのカクテルとウォッカと烏龍茶だった。
私はお酒は呑まない
そう言ったはずだった。
烏龍茶を私は手にした。
「…ちゃんは呑まなくても良いけど
酔わないと話せないから。俺呑むよ」

そう言うと中川家は一気に飲み干した。
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