Secret Lovers
「まぁ、お前らもなんかあったんだろうし、訊かれたくないんだろうし。問題さえ起こさなきゃ、俺は何でもいいから」
「三田先生はもうちょっと真面目にした方がいいと思う」

半分呆れ気味に言ってみると、三田はメガネをくいっと中指で押し上げながら、ククっと笑った。
その仕草が大人っぽく見え、やはり、同級生とは違うというところを見せつけられた気がした。
年齢も比較的若いし、顔立ちも悪くない。
本気で三田に惚れる生徒が出てもおかしくない気がした。

「いいこと言うな、佐川。その通り。俺も、そろそろ本気を出さないと、他の先生に面目が立たない上に生徒にもナメられる。というわけで、反省文な」
「えー!」
「佐川は1000字、河野は500字な。放課後までに書いとけよー」

そう言いながら、三田は原稿用紙を私に3枚、優子に2枚渡した。

「ちょっ!先生!贔屓反対!」
「なんだ、佐川。足りないのか?」

抗議の声を上げると、三田はニヤニヤと原稿用紙をひらつかせる。
何を言っても無駄らしい。

「書き終わったら、理科実験室に持って来い。以上」

私は少しむくれたまま、三田に背を向け、職員室の出口に向かった。
優子はその頬をつんつんとつつくが、私の頬は膨れっぱなしだった。
職員室の扉に手をかけようとすると、一人でに扉が開き、向こう側には人がいた。
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