手をのばす
そんな沙耶を見て、私は激しく後悔する。


ああまた沙耶に言わせてしまった。こんなこと、絶対に言いにくかったはずなのに。


私もずっと心の中だけで沙耶、沙耶と下の名前で彼女に呼びかけていた。


人との関係をうまく築けなかった私にとって、下の名前で呼びあうということは、特別な輝きをもっている。


親しさの証だった。


< 29 / 203 >

この作品をシェア

pagetop