手をのばす
それから私たちは、さらに近しい存在となった。


毎日寝る前に電話で数時間話しこみ、週末は必ず一緒に過ごした。


服や化粧品、夕食の買出し。

美容室はどこがいいかを一緒に探したり。


これまで当然のように独りですませていたつまらない用事が、沙耶と笑いながら

「あ、この服!由紀子に似合いそう」

「あのバッグも素敵ね」

「シャドウ欲しいんだけれど、どの色がいいかな?」

「そうねえ。沙耶だったらこれはどう?」

「あれすっごくおいしそう!じゃあ今夜は由紀子のうちで海鮮鍋やろうよ」

「それいいね。今日肌寒いし、鍋賛成!!」


などと他愛もない会話で、どんどん色鮮やかになってゆく。



どんどん輝きが増してゆく。


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