手をのばす
二人で買い込んだ材料を調理しながら、時々

「由紀子!!ちょっと見て!!このヒトすっごくかっこいいの。最近よくテレビ出てるんだだよね」

「ふうん、どれどれ。へえ、沙耶はこういうのが好きなんだ」

「ええ?何かバカにしてるでしょう!!そういう由紀子はどうなの?どんなひとがタイプ?」


とテレビに脱線しながら海鮮鍋は出来上がった。


「鍋なんて季節はずれだったかな?まあいいよね」


鍋からあふれ出るあたたかい湯気の向こうで、沙耶がほほを少しほてらせながら笑っている。


私はふいに涙が出そうになる。

幸せなのに、不安がある。




いつかこの大切な時間がなくなる日が来るの?
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