手をのばす
そんなわけはない。

私たちはこんなに楽しくやっている。


もしも私たちが恋人同士だったとしたら、

いつかは終わりが来ることを恐れても仕方がない気がする。


恋愛はいつか終わるものだとよく耳にするから。

(実体験ではないのが悲しいところだけれど)



でも幸い私と沙耶は女友達だ。

それも、お互いの人生初かもしれない分かり合える親友だ。

だから大丈夫、離れることはない。


こんな気持ちになるのは、大事すぎるから?

これまでの人生のせいで人に期待できなくなっているから?


そんな不安を振り切るように、

「いただきます」

と明るく言ってぐつぐつ煮えたぎる鍋に箸をのばした。



でもその思いもよらない熱は、私が伸ばした手を強く拒んだような気がした。
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