手をのばす
すると突然背中から声が飛んできた。


「あ!かわいい!それどこのー?」


別の同僚だった。


振り返ると、綺麗に化粧された顔でにこにこと笑っている。


急なことにちょっと驚いてしまったけれど、

「あ・・・これはね」

と私は自然に話し出すことができた。



最近こういう機会が少しずつ増えている。




以前は更衣室にいても、他の同僚に声をかけられることなんてなかったし、たまに話を振ってもらってもすぐに会話は途切れてしまった。


答えるべき言葉がみつからなくて、気まずい沈黙に耐えられなかった。



でもこのごろの私は沙耶とたくさん話をしたことで、自然と訓練されたようだ。
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