手をのばす
大げさかもしれないけれど、運命とか人生とか、そういう私にとってとてつもなく重かったことが、少しだけ前に進みはじめた感触があった。



それは「手ごたえ」だった。




声をかけてくれた同僚とひととおり話が終わり、一貫して明るく振舞えたことにほっとして、沙耶に向き直る。


すでに沙耶は化粧直しを終えて、最後の口紅をきつく引いていたところだった。




< 40 / 203 >

この作品をシェア

pagetop