手をのばす
化粧品が並ぶ鏡の前に立つと、沙耶は普段の笑顔になって


「本当にごめんね。どうやっても思うようにメイクが仕上がらなくなっちゃって」

と両手でほほを押さえながら、おどけて見せる。


私はあいまいにうなずいた。


昨日まで問題なく沙耶は化粧をしていたのに、どうして突然こんなことを言い出すのか・・・。




初めてみた沙耶の剣幕に、私はまだ動揺していた。

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