手をのばす
程なくしてメイクが終わって沙耶に鏡を向けると、

「わあ、そうそうこれこれ!こうしたかったのよ、由紀子、ほんとにありがとう」


目を輝かせて沙耶が何度もお礼を言ってくれた。


食い入るように沙耶は鏡を見ている。

仕上がりを目に焼き付けようとしているみたいだった。



そんな沙耶を見ながら、ぼんやり思った。



どんなに同じ道具を使っても、同じメイク方法でも、それは施される人によって印象は変わるものだ。



当たり前だけどまるっきり同じ顔の作りの人なんて一人もいない。


皮膚とか、骨格とか、すべてのバランスでその人の顔は作られているのだから。



派手でその人らしさを消すような化粧ならば、イメージを同じようにすることはできると思うけれど。

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