手をのばす
ある日のランチ中に、沙耶が口を尖らせながら愚痴りだした。


「今週の土曜日は、親戚の披露宴に出席することになってるの。場所が遠いから泊りがけなんだ」

私はうなずいた。


「日曜日もつぶれちゃうなあ。あーちょっと面倒。久々に顔を見せるとすぐに結婚だのなんだのってうるさいおばさんがいうんだもの」


「そうなんだ。ほんとどこにでもそういう親戚いるよね。ほっとけばいいのよ」


私は笑い飛ばそうとした。


「でもね、こっちが黙ってると今にも見合い写真でも持ってきそうな勢いなの。まいっちゃう」


愚痴はまだ続きそうだった。


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