手をのばす
注文したコーヒーが運ばれてきて、私はバッグから文庫本を取り出した。

ゆったりした時間が流れる。

お気に入りで何度も読んだ本なのに、こうして場所が変わるとまた新鮮な気持ちで文章をなぞることができる。


時々コーヒーを口に運びながら、先日の沙耶を思い出す。


由紀子みたいに、か。


ここ最近、沙耶の知らない一面を立て続けに見たせいか、正直少しだけ気疲れを感じていたのは否定できない。


一緒にいて楽しいのは、前と全然変わらないのに・・・・・・。


自分の心が狭いのかな、とも思う。

あまり人と深く付き合ったことがないから、こういうことにとまどってしまうんだ。


きっとみんなトモダチ関係を続ける中で、色々な想いを抱えながら仲良くしたり、離れたりしているんだ。



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