手をのばす
「あの、私も思い出しました。サッカー部のキャプテンでしたよね」


すらっとした長身で、太陽となじみの深さを感じさせるように真っ黒に日焼けをしていたあの頃の沢渡と、目の前の彼を重ねながらそう言った。



「そう!いやあ人違いで、ベタなナンパだと思われたらやばいなあって、内心ハラハラでしたよ。俺ここの会社に就職して、この春からこの店に配属されまして。江崎さんは?会社がこの近くなの?」




沢渡の口調はとてもソフトだ。心地よく耳に響く。


だから初めて会話をかわすのに、それほど緊張せずにいられた。

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