コンビニの彼
内心ビクビクしながら従業員用通路を通る。
早田が後ろからついてくる。
暗い通路に店内の光が差し込んで少し目が眩んだ。
猿は…?
あたしがその姿を確認する前に猿の声がした。
「てめぇが持ってんだろ」
目をギラギラさせながら猿があたしを睨む。
あ…ヤバイ…。
何だか想像以上にご立腹の様子…。
奴の剣幕に思わず白状しそうになったけど、今までの暴言の仕返しをしたくなった。
「…な、何のこと?
突然呼び出しといて、意味分かんないこと言わないでくれる?」
あたしはしらばっくれた。
猿は舌打ちをして
「ちょっと来い!」
と言ってあたしをコンビニの外に連れ出した。
「ちょっと何なのよ!あたし今からバイトなんだけど!」
猿のあとについて行き、駐車場の端っこまで来ると猿がピタッと止まった。
そしてあたしの方に振り向く。
「お前が手帳持ってんだろ」
猿は今度はさっきみたいに怒り爆発寸前というような態度ではなく、落ち着いた様子だった。
何だか見透かされているような猿の目にあたしは圧倒された。
「…うん」
今までにない猿の雰囲気にあたしは呆気なく白状した。
何か、猿のやつ…。変…。
さっきまであんなに怒ってたのに。
猿は何のために持って来たのか、鉄パイプを握りしめた。