コンビニの彼
「ふぅ〜ん、何だか正義感と威勢がある子だな。
…気に入ったよ…」
タンクトップ男があたしの全身をくまなく眺め回し、ニヤリと口角を上げた。
「……は…っ?」
「ねぇ、こいつも一緒に連れてこう」
゛おい゛とタンクトップ男が右横にいたロン毛男に顎で指示を出した。
ロン毛男は無言であたしの方を見た。
あたしはドキッとした。
ロン毛男がつかつかとあたしの方に歩み寄り、女の子と同様にあたしの腕を掴んできた。
あたしの全身がビクリと震えた。
な、何これ…っ。
こんなことになるなんて、考えてもみなかった。
何とかなる、って心の中で信じて、いざ飛び出してみたけど…、
男がグイッとあたしの腕を引っ張り、それにあたしはよろめいた。
「じゃ、行こうか」
タンクトップ男が背中越しにそう言った。
嫌だ…。
何なの…?
…あたし、連れてかれちゃうの…?
あたしは混乱から声が出ず、みるみるうちに涙で視界が覆われる。
あたしは男に引きずられるように裏門とは逆の方向に歩かされる。
「白い車なんだけど、見える?」
タンクトップ男が機嫌の良い、友達と話すような感覚であたしたちに話し掛けてきた。
あたしはぼやけた視界で前を見た。
40mくらい離れたところにあるワゴン車が太陽の光でキラッと光った。
あたしはまた地面に俯き、諦めかけたその時、
「おい、てめぇら…。うちの連れを連れてどこに行きやがる」
と、背後から猿の声がした。