君に咲く花火
男性がタイ語でなにやら男たちに言うと、サッと男たちは散ってゆき、すぐさま他の外国人に「タクシー」と叫んでいる。

男性が微笑んで近づいてくる。

ワイシャツにズボンで、なかなかハンサム。
肌が黒いからか、歯の白さが際立っている。

「待たせたかな。僕は、ソムサックです」

日本人のように流暢な日本語でそう言うと、私のスーツケースを持って歩き出そうとする。

「ちょ! 待って、待ってよ!」

「車はあちらです。ついてきてください」

スタスタと長い足で歩き出す。

これって・・・やばくない?
ひょっとして、泥棒!?

「待ちなさいってば!」

追いついて、強引にスーツケースを奪い取ると、
「あんた、誰なの?」
と指をさした。
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