一生に二度の初恋を『あなたへ』
今までも、こうやって思い出して、辛くなっても家族や友達に我慢してきたんだよね。
春さんがいなくなってしまったときも。
こうやってずっと。感情を心の奥に押し込めて。
我慢なんか、しなくていいのに。強い人である必要なんて、ないのに。
「……わたし、ただの斎藤くんのクラスメイトだから……」
斎藤くんは言葉の意味が分からなさそうだったけれど、なにも言わずにわたしの次の言葉を待ってくれた。
「だから。笑顔。取り繕わなくていいの。全部我慢しなくて、いいんだよ……」
せめてわたしの前ぐらい自分の悲しみを出せばいいと思う。
わたしにぐらい弱いところを見せたっていいよ。
だってわたしは斎藤くんの好きな人でも友達でもない、ただのちっぽけなクラスメイト。
でも側にいれるだけ、わたしは幸せだと思うんだ。
受け止めるだけでも必要とされたいんだ。
「……ごめん、肩貸して」
右肩に両手を置かれて、その上に頭を乗せて斎藤くんは下を向いた。
わたしに身体を預けるようにした斎藤くんだけれど体重はかけずに、ただ乗せるだけ。肩に重荷は感じなかった。