一生に二度の初恋を『あなたへ』


昔を思い出した。


休日、狭いアパートに家族揃って『眠いー』とぶつぶつ呟きながら起きて。

お母さんが目を擦りながらも作る朝食の匂いをテレビを見ながら感じて。


『ご飯だよ』と声がしたら三人で笑ってそれを食べる。



ただ、それだけ。


でもそんな懐かしくて、何気ない日々にはもう戻れなくなってしまった。

何気ない日々がどんなに大切か、分かってしまった。



あの日が始まりだった。


あの日、あの時。


わたしはあのことをずっと悔やんでいる。

昔の思い出したくない出来事たちは、考えないでおこうと思っても、簡単にわたしの脳内に蘇ってきた。




中学二年生の冬休み。

その日わたしは夜に友達と遊んだ後一人で歩いていた。


車の通りが多い交差点。車のライトが光る中。


大きな通りを渡ろうとしたわたしは、信号機のないところで横切る。



そして、車にぶつかった。

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