一生に二度の初恋を『あなたへ』


自分で勝手に考えたくせに、胸が掴まれて痛くなった。



斎藤くんは『王子様』でもわたしは『お姫様』になんて、なれない。



結愛ちゃん、ごめんね。

まだ結愛ちゃんには一つだけ伝えれてないことがある。


クラスの人の話の中でもよく出るから、もう結愛ちゃんはとっくに知ってるかもしれないけれど。


斎藤くんの心の中には春さんという大切な人がいるから。



わたしが斎藤くんの隣に立つことは。この恋が叶うことは。

無いんだよ。



お姫様を迎えに行く王子様は『わたし』という存在には気づいても、ちょっと優しくしてくれても、わたしの横は通り過ぎて行ってしまうんだ。




――お姫様になれない凡人のわたしは、時が経つにつれてどうなるんだろう?


何も変わらないままただ日々が過ぎていき、卒業して、この恋は終わりを告げるのかな。


いや、でもわたしには斎藤くんの笑顔を沢山作るって決めた。でも斎藤くんが心から笑顔になるためにはやっぱり春さんが必要不可欠で……わたしに何が出来るんだろう。


授業そっちのけで、頭の中が斎藤くんと春さんのことで埋め尽くされた。

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