劣等審判
 はっきり言おう。僕には友達がいない。少ないではない。《いない》のだ。
 
 寂しくはない。もうすぐ慣れ始めている。

 世界は案外大胆で。かつ、繊細だ。確かに、そうなのかもしれない。だって、友達が《いる》人間と、《いない》人間がいるのだから。

 神はそういう人間を作ったんだ。もしかしたら、大胆なのは世界じゃなくて神なのかもしれない。でも僕が友達がいる人間になりたいとは思わない。なんか…楽だし。友達に嫌われるとか、考えないですむ。

 そう思う人間は僕だけではないと思う。現に、友達のいない奴が僕の隣にいる。

 世界はひどい。せめて僕の隣に置く人間はもう少しましな人がよかった。

「おはよーっす!!石川」

 僕の隣にいる人間。それこそが彼、岐阜 大騎なのだ。

 このように岐阜が声をかけてきたら一番良いのは【無視】だ。だが、岐阜には効かない場合が多い。全く…いい迷惑だ。

「あれ?どうしたっすか?調子でも悪いんすか?」

 あぁ、悪い。最悪だ。君のいるせいで。

「別にぃ」

 僕の嘘ツキ。本当は消え失せろって思っているのに。僕って案外馬鹿だな。

「そうっすか!!ならいいっす」

 何がいいんだ。僕の調子がよかろうと悪かろうと、別に岐阜に支障はないじゃないか。

 やっぱり…こいつは馬鹿だな。
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