カンナの花
「さっき言ってたじゃん、習いたい先生がいるから、高岡大学に行きたいって。だったら、その気持ちを尊重しないと、いくら親の言う通りに日本一頭がいい埼京大学に行っても、後悔しかしないと思う。」
「そうですよねぇ。親の言うことばっかりに気を取られてたら…だめですよねぇ…。」
「そうだよ。自分の人生なんだよ?」
「結局わたしは"いい子ちゃん"やっちゃうからだめなんだよなぁ。」
「…ダメだなぁ、佐衣は。」
名前を呼び捨てされて驚く間もないうちに、手を握られていた。
わたしはびっくりして、けれど咄嗟に、焦っていると思われたくなくて、表情を変えなかった。得意の能面フェイス発動。
でも、取り繕えているわけなんかなくて。
どきどきする?
そう言って、彼はわたしの右手をより強く握りしめた。突然の展開にわたしはおろおろとたじろぐ。悔しいけれど否定できない───わたしはどきどきしている。
視界の端に感じる熱い視線。私はやむなくうなずく。声も出なかった。