完璧上司は激甘主義!?
万が一に備えて、スマホの画面をダイヤル画面にし、110番をプッシュし、すぐにダイヤルできるようにした。

「よしっ!!」

二日酔いもどこかへぶっ飛び、冷や汗を掻きながらドアの方へと向かっていく。
そして大きく息を吐き、固く瞼を閉じて勢いよくドアを開けた。

「やっと起きた」

――え?

すぐに聞こえてきた聞き覚えのある声に、瞼は開かれる。

「……嘘」

ドアを開けたまま茫然と立ち尽くす私を横目に、なぜか腕まくりをして部屋の掃除をしていたのは、南課長だった。

「起きたならさっさと風呂に浸かってこい」

「お風呂?」

一切私を見ることなく話しを続ける南課長。

「早く!」

「はっ、はい!!」

まるでオフィスにいるような錯覚に陥り、言われるがままバスルームへと飛び込んだけど……。


鏡に映る酷い姿の自分に問い掛ける。

「どうしてこうなっているの?」

目が覚めたら自分の部屋で、記憶を失くしていて。
そして大好きな上司が、私の汚部屋をきれいにしていました。
……なんていうこの現実は、夢じゃないんだよね?

叫びたい衝動に駆られながらもグッと堪え、唖然としたまま鏡に映る自分の姿を見つめることしか出来ずにいた。

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