LOVEPAIN⑤

私は色紙とマジックを、
みかちゃんに差し出した



みかちゃんはそれを受けとると


「ちょっと待って下さいね」


さらさらさら、
とローマ字のようなサインを書いている


流石慣れているのか、
それは一瞬で




「その知り合いの人の名前は?」


そう訊かれ、
宛名も入れてくれるのだと気付いた




「えっと、篤です。

漢字じゃなくてひらがなで大丈夫ですよ。

あつしで」



「あつし君ですね?」




“あつし君へ”とサインの上に書かれている


そして、今日の日付も




マネージャーの男性は、

5階に止まったエレベーターのドアが閉まらないように、
手で押さえている




「はい。どうぞ。

広子ちゃん。
もしかしてこのあつし君は、彼氏?」



「いえ!
違いますよ!!」



私はサインの書かれた色紙を受け取りながら、

首を横に振った




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