私に意味を。
学校に着くのは、いつも一番だ。

なぜなら他の人は皆、朝練があるから。

文化部に所属している私は、朝練とは縁のない生活をしている。

部活も週に一度か二度。

しかも、家庭科室で手芸をするだけというような、お世辞にも充実しているとは言い難い中学校生活を送っている。

まあ、別にいいのだけれども。

「・・・。」

私の名前は鮎川だから、席は一番前。

今日も静かに席に着き、何も書かれていない黒板をじっと見る。

別に、黒板に何がある訳でもない。

ただ、視線のやり場に困るから、見て居るだけ。

ボーっとして居るはずなのに、意識はやはり朝日ちゃんに向かっていく。

朝日ちゃんは、どんな子だったのだろう。

大声でアハハって笑ったのかな?

それとも、おしとやかにクスクス笑うの?

ねぇ、朝日ちゃん。

私、やっぱり気になるの。

あなたのこと。

何一つ、覚えてはいないから。

私の感情の行き着く場にしてしまっている。

ごめんなさい、朝日ちゃん。
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