私に意味を。
「早く席ついてー!」

ハッと我に返って時計を見れば8時ちょうど。

朝練を終えたばかりの人たちは、大急ぎで支度している。

・・・ご苦労様。

どれもこれも、私には縁のない事だけれど。

でも、時々重ねてしまう。

もし、私が運動部に入っていたら、こんな風に支度するのかなって。

うまく想像できないけど。

「おーい。今日は転校生来てんだから、早くしろよー。」

・・・転校生?

そういえば、先週先生が言ってたな。

まあ、私には関係ないけど。

にしても、中2の春なんて、随分中途半端な時期に来るんだ。

・・・何か、事情があるんだろうな。

「よーし。全員座ったな?では転校生の紹介をする。及川、入ってこい。」

「はい。」

廊下から、ハッキリと聞こえた返事。

その声は、男子にしては少し高く、女子にしては少し低い。

抽象的な印象をもたらせる声だった。

そして、少し遠慮がちにゆっくり開けられたドア。

そこから顔を出したのは、一人の男子だった。

その人はゆっくりと、しっかりと歩いて行く。

そして、まるで教科書に出てくるような綺麗な字で黒板に《及川祐》と書いた。

「始めまして。及川祐《オイカワ ユウ》です。皆さん、一年間よろしくお願いします。」

深々と頭を下げる及川君。

体つきはスラッとしていて、華奢なイメージ。

身長は多分平均くらい。

髪は茶色がかったクセ毛だけど、髪質は細くて柔らかそう。

目は大きめで、パーツのバランスがとれている。

多分、モテるんだろうな。
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