私は彼に愛されているらしい
感じるものがあったのか加藤さんは反論なく口をとざして視線も落とした。

依然向けられる片桐さんからの強烈な視線に居心地の悪さを感じながら沈黙の時間が過ぎていく。流石に俺も居心地が悪くなってCADに戻ったんだ。

彼女が言うのはきっと加藤さんとの会話も要因の1つになってるんだろう。

あの会話から考えるに加藤さんとの話は1回や2回のものでは無さそうだ、誰も気付かなかったそれに気付いた片桐さんがすぐに注意をしてくれたに違いない。あの人はいつも行動派だから。

「若さが違うってどういうこと?」

あえて自分からは聞かなかったけど、こうなったら話が別だと俺は踏み込むことにした。

「女の人は肌も若さも25歳で曲がり角って言うじゃない。本当は私の年齢じゃ、ちゃん付けだって恥ずかしいんだろうし、色々焦り出す…男の人にとってはちょっと面倒な年齢なんだよね?それに女性では“もう”って言われている年齢でも男の人はまだまだこれからで、寧ろもっと遊んで経験を…。」

「…ふざけんなよ。」

抑えきれずにもらした言葉でみちるさんの体が跳ねた。

怒りで手元に力が入る。

ふざけんなよ加藤。どういう身分でそんな発言をしやがった。畜生、だからあんなに片桐さんが怒ってたんだ。

見たことも無い大きな怒りを抱えて、みちるさんの為に怒ってくれたんだ。

「ふざけんな。」

男の何が偉い?お前の何が偉くてそこまで傲慢にさせる?

「アカツキくん。」

「みちるさんは十分魅力的だ。綺麗に年を重ねてる、素敵な女性だと俺は思ってる。…俺だけじゃなく、みちるさんの魅力に気付いている人は周りに沢山いる筈だ。」

どうしてそんな下らない奴の言葉で心を痛めなくてはいけない?

今の俺ならあの時の片桐さんの気持ちがよく分かる、だからこそ俺にも伝えずに怒ってくれたことが嬉しかった。そして今日の昼間の会話も深みを増した。

あの人の気持ちが痛いほどに伝わって泣きそうだ。

< 95 / 138 >

この作品をシェア

pagetop